うまく弾けないとき

「楽譜が読める」は「やがて弾ける」‐音名編

生徒さんがレッスンでなかなか弾けない箇所があるとき、その箇所を音名(おんめい‐音の名前、ドレミファソラシドのこと)*で歌ってもらうと、大抵つっかえてうまく歌えません。うまく歌えない主な原因は音符の位置と音名を把握しきっていないことと、音の長さや拍を理解しきっていないこと、この2つです。

演奏は主に腕、手指の運動ではあるのですが、指示を出すのは頭。講師の私だってなんの苦もなく弾いているように見えてもいたって凡人、頭の中で音名を唱えながら、拍を打ちながら弾いています。

今回は音名編です。五線譜上の音の位置と名前については色々な本に書いてありますし、インターネットで検索すれば出てきますよね。そして皆さん、まずはドを覚えて、それを足掛かりに少しづつ覚ていると思うのです。でも、それでもなかなか楽譜が読めるようにならないとか、いつまでも音符をドから数えている、というお悩みも多いんです。

*私の教室では音名はイタリア音名(ドレミファソラシド)を使っています。私のページで音名といったらイタリア音名(ドレミ…)のことです。
コードネーム(左手のボタン)では英音名(CDEFGABC)を使います。このときは英音名と書いています。

音名、階名の扱いについて

ドレミファソラシドの順番をおぼえよう

よくあるつまづき - 音の並びを把握しきっていない

ドレミファソラシドは勿論 言えるよ! という人も下降(ドシラソファミレド)がつっかえてうまく言えなかったり、「ファから順番に下がって言ってみて」と言われると、うーんと考えないと出てこない、なんてことがあります。下降で言えない、ド以外の音からすっと言えない場合は、まだ音の並びを把握しきっていない発展途上の段階です。

その状態で楽譜に向かうと、「1音ずつドから数える」というとても大変な作業を行うことになります。この状況を脱するためにはまず、

下降(ドシラソファミレド)も言える

どこの音からでも言える(上昇下降とも)

ようにしましょう。これは楽器が無くてもどこでもできる訓練です。

1音ずつドから数えることがどういう状態かというと、例えば楽譜に「ド ミ♭ ソ」と書いてあるとしましょう。

まずは「ド」。
次、ド……レ……「ミ」に♭が付いてるから「ミ♭」。
次は、ド……レ……ミ……ファ……「ソ」。

このような状態です。これを言葉を読むことに当てはめると

えっとこれは、ら……「り」。
次は、わ……を……「ん」。
次は、か……き……く……け……「こ」だけど「゛」が付いてるから「ご」。

このような状態です。文字は分かっていても言葉の意味(りんご)は読み取れていませんね。楽譜も同様に、数えてやっと音の名前が分かる状態では音の流れ(メロディー)が読み取れません。

まずはゆっくりでもよいので、ドから数えずに読めるようにします。そのためにドレミファソラシドの順番をしっかり覚えましょう。

 

以下の動画で音名の上昇下降とイタリア音名と英音名を対応させる練習ができます。

 

五線ではなく十線で覚えよう

よくあるつまづき-「ヘ音記号を一旦ト音記号読みする」

生徒「えーっと、下から2つめの間に音符があって、これはト音記号でラだから、ふたつあげてド」

私 「それ、ヘ音記号の楽譜だから、ト音記号読みしないようにね。」

生徒「でも先生、ト音記号でラの場所だからヘ音記号だと2つあげてドでしょ?」

私 「ドで合ってはいるけれどね。ではこの音は?」

生徒「ええーっと、下から2本目の線の上に音符があって、ト音記号でソだから、ふたつ上げてシ」

私 「さっきのドを覚えておいて、ド→シて辿ったほうが早いですよ。」

生徒「えっ? これ、シですよね? シであってますよね?」

私 「うん、シで合ってるけど、シに至るまでが長いの。毎回毎回そんな遠回りをしていると大変よ。音符の位置と音の名前を直結させたほうが後々楽なの。」

生徒「でも先生、このほうが分かりやすいんです。」

私 「そう思ってるだけですって。頭の中の既存の回路を使えば新しい回路を作る苦労はないけど、遠回りになるの。ひらがなの『る』ってありますよね。文字を読むときに、『これは「ろ」のふちっこが丸まってるから「る」だ』って毎回やってます?」

生徒「やりません・・・」

私 「そうでしょう、そうでしょう。」

‐‐‐‐
ひらがなを覚えたての子どもならやりますけれど、そんなことずっとはやりませんよね。「る」をみて「る」と読んでいるはずです。それを毎回「ろ」を経由してたら大変です。そんなことをしていたら文字は分かっても文章が読めません。

ヘ音記号を一旦ト音記号読みするのもそれと同じで、これでは音の名前は分かってもメロディーが読み取れません。

なので、
楽譜上の音の位置を覚える
数えなくても音名が分かるようにする

そのために・・・五線ではなく十線で覚えます

まずこの3つのドを覚えます。

ト音記号とヘ音記号で表される音というのは、下のようにひと並びになります。
線が5本と5本の10本でセットです。

いわゆる「真ん中のド」というのはト音記号とヘ音記号の境のドです。
ト音記号の五線とヘ音記号の五線の間に横線を書き加えて※書いてある音のことです。

※五線の上や下に書き加えた横線を加線(かせん)といいます

真ん中のドより高い音を書き表すのがト音記号の五線、真ん中のドより低い音を書き表すのがヘ音記号の五線です。

ドをまず覚えて、つぎにソを覚えて、そこを足掛かりにどんどん覚えてください。直通回路を作ってしまえば後々楽ですからね。

私の作った教則本では上記の並んでいる音を覚えるのに80頁使っています。弾きながら徐々に覚えていくのが有効です。1回30分月2回のレッスンの方ですと、だいたい半年から1年半くらいで修了します。

まずはト音記号とヘ音記号のドを覚える

十線で見つつ、弾きながら徐々に覚えていく(数をこなす)

楽譜に向き合おう-音名を唱えよう

よくあるつまづき - 先に耳で覚えようとする

曲の始めから通しては弾けるけれど、途中からは弾けない。レッスンや合奏などで楽譜を指差されて「ここを直してね」と言われても分からない・・・

音符の上がり下がりでなんとなく追っている・・・

こういう方は耳と指の運動で覚えているので、始めのうちは進みがとてもよいのですが、元々持っていた力より先には進めません。頭の中で音名を唱えず、「なんとなく」「感覚で」弾いているのも特徴です。
なんとなく感覚で弾けてきた経験から、つまづいたときに「指で覚え切っていないからだ、練習が足りないからだ」、「聞けば分かるからYouTubeで探そう」と譜読みに立ち戻ることができません。

耳で覚えて弾けるのなら耳コピーと言われるものなんじゃないの?と思われた方もいらっしゃると思いますが、この場合はそれとも違います。聴いた音と実際の楽器の位置とはつながらない、楽譜を見てしっかり確認できる(確信をもって弾ける)わけでもない、という悩ましい状態なのです。
「こんなもんかな」と中途半端なこの状態で弾き続けると、何年も楽器を弾いている割には上手くならないという状況にはまります。

慣れるまでは大変ですが、

先に耳で覚えるのはやめて、まずは楽譜を読む

ようにしてください。これについては「アコーディオン練習の流れ(私の教室の場合)」に詳しく書いてありますので、参考にしてください。

※あくまで楽譜の読み方を身に着ける上での話であり、楽譜で確認した後で音源を聴いて表現上の考察を重ねるのは大事です。

!音名は常に唱えること!

曲に取り掛かるときに楽譜を読む

弾けるようになったら唱えない(指の運動で覚える)

このような方が案外と多いようですが、これだと一度曲を(指の運動を)忘れてしまったら、また始めからやり直しになってしまうようです。時間が経つと前に弾けた曲が弾けなくなるなんて勿体ないですよね。

時間が経つと前に弾けた曲が弾けなくなるなんて、始めに楽譜を読んだ苦労が勿体ないですし、それでは楽譜を読む力が積み上がっていきませんので、

弾けるようになっても音名は常に唱えること!

この積み重ねで楽譜を読むのが速くなってきます。

時々 生徒から
「せんせいはそんなことしてるの?」
と聞かれますけれど、してます。

聴いた音と楽器の位置が直結する方なら音名は唱えなくても良いでしょうが、そうでないなら必要だと思います。

ドレミ - CDEの対応ができるよう、覚えきってしまうこと

左手ベースの音はイタリア音名で読むのがおすすめ

よくあるつまづき CDE・・・とドレミの関係性がすぐに出てこない

この項はアコーディオン限定の話になります。

CDE…とドレミ…の関係性がすぐに出てこないとは、どういうことかというと「Fはドレミで言うと何?」と聞かれて数秒固まった後、「Cがドだったから、CDEF・・・ドレミファ・・・ファです!」と指折り数えるような状態のこと。初級のうちはまだいいのですが、初~中級で楽譜を読むの時間がかかると練習時間がやたらとかかってしまいます(練習が億劫になる)。

ドドソソララソーと歌うのと同じようにCCGGAAG-と歌うことができる、Eの2つ下の音は?と訊かれてすぐにCと答えられるのなら問題ありませんが、おそらくすぐにはできないと思います。小学校中学校の音楽の授業ではイタリア音名、つまりドレミを使っていますし、アコーディオンの右手を弾くときにはイタリア音名(ドレミ)で読んでいるはずですから、音名はイタリア音名(ドレミ)で統一した方が有利です。

初~中級へ進みたい方、具体的にいうと、左手が♩♩♩♩以外(いわゆるブンチャッチャッチャ以外)の伴奏でも弾きたい、童謡、唱歌以外も弾きたいという方は対位ベースですとかオルタネイティングベースの学習も必要になってきます。このときに英音名とイタリア音名の対応ができていると学習進度が良いのです。

英音名とイタリア音名の対応ができるよう、覚えてしまいましょう。

ちなみに ラからABCD…です。
伊 - 英

ド - C
レ - D
ミ - E
ファ - F
ソ - G
ラ - A
シ - B

*****

自分が子どものときに一時混乱したことを思い出したので書いておきます。

♯♭の付く場所ですが、

音符に♯♭を付けるときは、音符の左横に付きます。 
♯♩ ♭♩

しかし、

音名に♯♭を付けるときは、音名の右横に♯♭が付きます。 
ファ♯ B♭ 

音名のまま読もう-アコーディオン演奏のときに階名読みする必要はありません

よくあるつまづき-階名になおして読む

これは60代後半から70代の方に多い事例です。

私 「♯1つ、G メジャースケールの曲ですね。音名を読んでいってください。」

生徒「ソ ソラシ シド レ ミレ シ ・・・。せんせい、でもこれ、ほんとうは ソをドにして読むんですよね? これだとド ドレ ・・ ミ ・・ミ ファ・・・になるんでしょ?」

私 「お??」

生徒「昔、学校でそう教わったから」

私 「ああー、それ、しなくていいですよ。書いてある音の高さのまま読んでください。」

生徒「でも、学校でそう習ったよ。この曲だとソから始まる音階の曲だからソがドになるんでしょ。」

私 「その通りなのですが、それは音名ではなくて階名(かいめい)と云うんです。音階(音の階段)の中でのその音の位置、役割をドレミファソラシドで表したものが階名です。」

生徒「でもドレミに直したほうがいいよね。ドレミファソラシドになおした方がやりやすいよね?」

私 「いえ、書いてあるそのままの音の高さで読んでください。右手のソラシをドレミにするなら、左のG(ソ)もC(ド)にしなくちゃいけませんし、なにより、ドードレミーミファと唱えながら鍵盤はソーソラシーシドと弾けますか?」

生徒「無理ですね。」

私「難しいですよね。音楽の仕組みを勉強するときには階名読みが必要になりますが、アコーディオンを弾くときは音名読みしてください。つまりそのままでいいんです。」

*最後に追記あり

ー--

(補足説明)

ボタン式アコーディオンの場合は右手ボタンの配列の特性上、階名(移動ド)での演奏も可能です。私もボタン式アコーディオンを始めるときに階名での演奏を考えたことがありましたが、この場合は譜面との相性が大変に悪いのが問題になります。譜面が階名(またはハ長調)で書かれていれば問題ありませんが、調号(ト音記号、ヘ音記号の右横に付く♯や♭)が付いた場合、階名に直す作業が必要です。これがパッとみてパッとできれば問題ないのですが、できないとなると譜面を書き直す作業が必要です。
大抵の楽譜は音名(移動ド)で書かれていますし、ミュゼットを弾きたい方なら必ず手にするであろうあの分厚いミュゼット本もすべて音名(移動ド)で書かれています。ミュゼット本を弾くなら音名対応した方が有利という点が決定打となり、私は音名でボタン式アコーディオンを演奏する方法を選びました。
ボタンアコーディオンでの階名演奏が向いているのは、耳で聴きとり(耳コピー)ができて、それが常に階名に置き換わる(移動ド)タイプの方です。

まとめ

音の並びをおぼえよう
五線+五線 十線でおぼえよう
音名を唱えよう
ドレミ・・・とCDE・・・の関係性は早く覚える
階名に直さずそのまま読もう

―――
2019年7月21日 追記

私の認識不足でしたが、現在70歳前後の方は、学習指導要領で定められた

音名(絶対的な音の高さ) ‐ハニホヘトイロハ
階名(音階上の役割を表す)‐ドレミ ファ ソラシド

これを学校でしっかりと習われたのですね。

70歳前後の方が階名としてのドレミファソラシドを習われたのは知っていましたが、音名をハニホヘトイロハで習われていたことは知りませんでした。
(これより下の世代は音名もドレミファソラシドを使っています)

しかし実際のレッスンで「せんせい、ハの鍵盤はどこ?」と訊ねられたことはありませんでしたし、ハニホヘトイロハで習ったという方に対して私が「今後はハニホヘトイロハで歌いましょうか?」と提案したところ、今のところ全員に「いえ、ドレミでお願いします」と言われたので、今後も音名はドレミファソラシドのイタリア音名を使っていきます。

‐‐‐
ちなみにこの音名、階名の扱いについて、学校音楽教育(小学校中学校の音楽教育)の世界では揉め続けているようです。
学習指導要領的には「ドレミファソラシドは階名なのに、階名を音名読みに使っている!混同している!」ということになるようですが、ハニホヘトイロハでの器楽演奏が浸透していない以上、問題の解決は難しそうです。

学校音楽教育以外では、音名はイタリア音名(ドレミファソラシド)、ドイツ音名(CDEFGAHC)、英音名(CDEFGABC)などを使い、階名は数字を使うことが多いです。「移動ド」と云って階名としてドレミファソラシドを使うこともあります。

アコーディオンの場合はフランスの楽譜を使うことも多く、フランスの楽譜ではたまにコードネームにイタリア音名do、re、mi、fa、sol……が使われています。この場合は階名読みすると都合が悪いことになります。

私の教室では先ほど書きましたように、音名はイタリア音名(ドレミ…)を使います。階名としてのドレミ…は使いません。理論の説明のときには数字を使っています。

まとめ

音の並びをおぼえよう
五線+五線 十線でおぼえよう
音名を唱えよう
ドレミ・・・とCDE・・・の関係性は早く覚える
階名に直さずそのまま読もう(ドレミ読みで)

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