アコーディオンの一番の特徴は蛇腹で空気を送り込むことですね。今回は蛇腹の開閉箇所について書いていきます。持ち方や開閉そのもののやり方、固い、重い、等々のお悩みについてはアコーディオンの蛇腹の動かし方/持ち方、開閉姿勢を参照してください。空気が足りないというお悩みについては、このページの後半に書かれています。
ここはアコーディオンの操作の中でも最重要事項なので、始めのうちにしっかりと身に着けておいてください(ここで抜けがあると後々まで影響が出ます)。レッスンに通われている方はレッスンの進みを良くするためにも自宅練習のうちから開閉箇所をチェックしておきましょう。
蛇腹の開閉記号
(関連)アコーディオン教則1巻20頁、25頁
左向きの矢印 ← 蛇腹を開く
右向きの矢印 → 蛇腹を閉じる
初級向けの本にはこの蛇腹の開閉記号が書かれています。
蛇腹を動かさないとき
赤い四角で囲ってあるところは、両手とも休符なので、蛇腹を動かしません。動かそうとしても空気の流れ道がないので蛇腹はほとんど動きません。「蛇腹が固い」「蛇腹が思うように動かない」と感じる主な原因は、両手とも休符の時に動かそうとすることです。「ここはわざわざ蛇腹を動かさなくてもいいよ」という記号は無いので楽譜から読み取ることになります。
もうひとつよくある質問に鍵盤・ボタンを押さえ直した時の蛇腹の動きがありますが、
1音ずつ蛇腹を動かす必要はありません。
※一音ずつ蛇腹を動かす奏法に「ベローズシェイク」というものがあり、その場合は結構な速さで交互に開閉します。使用箇所には← → ← → ← → ← →と矢印か、「Bellows Shake………」と文字と点線で指示してあります。高等テクニックのひとつ。
いつ蛇腹の向きを変える(蛇腹を返す)のか
蛇腹の向きを変える、開きから閉じにする、閉じから開きにすることを「蛇腹を返す」とも言います。このサイトでは分かりやすく「向きを変える」と書いていきますが、「返す」と書くこともあると思いますのでご了承ください。
蛇腹で圧倒的に多い質問がこの「蛇腹の向きをいつ変えるのか」です。
結論から言いますとフレーズごとになります。フレーズとは旋律(メロディ)のまとまりのことです。そのフレーズが2小節か4小節ごとになることが多いので、一般的な回答としては「2小節か4小節ごとに蛇腹の向きを変える」になります。
2小節ずつ
または4小節ずつ
フレーズが4小節の場合でも、21~60ベースの小・中型の楽器ですと、空気量の都合から2小節ずつの方が良い場合もあります。
テンポがゆっくりした曲では、96ベースや120ベースの楽器でも2小節ごとに開閉することがあります。小・中型の楽器ですと1小節ずつ開閉することもあります。
逆にテンポの速い曲だと、大型の楽器の場合、8小節で返すこともあります。
『蝶々』を例にあげます。読んで想像がつくように歌詞で書きます。|は小節の区切りを表します。
ちょうちょう|ちょうちょう|なのはに|とまれー|
なのはに|あいたら|さくらに|とまれー|
さくらの|はなのー|はなから|はなへー|
とまれよ|あそべー|あそべよ|とまれー|
4小節まとまりになっているのが分かると思いますし、2小節ずつで区切っても良さそうだということも分かると思います。
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前奏が4小節だった場合、前奏が終わった時点で蛇腹は閉じきっておきたいので、蛇腹に余裕があっても2小節ずつの開閉にします。
このページで取り上げている練習曲は4小節で1番が終わるので、2小節ずつ開閉の指示がしてあります。
具体的な開閉のタイミング
水色の線が引いてあるタイミングで蛇腹を開いたり閉じたりします。
フレーズのまとまりで蛇腹の向きを変えるために、よく歌の息継ぎをするところに例えられますが、息継ぎ - 息を吸うタイミングで蛇腹の向きを変えてしまうと
ちょっと早いのですね。この曲のように休符が挟まっている場合は先に書いたように「蛇腹が重い」「蛇腹が思うように動かない」と感じてしまいますし、音がのびているときにこれをすると、音が鳴り直してしまいます。更には「空気がいつもちょっと足りない」「アウフタクトで蛇腹の向きが変えられない」という問題も引き起こします。
細かいことのように思われるかもしれませんが、蛇腹の向きを変えるタイミングは吹き込みのタイミング - 音を出す時になります。
アウフタクト(弱起)の場合
(関連)アコーディオン教則1巻49頁、82頁
アウフタクト(弱起)‐ フレーズ(メロディーのまとまり)の始まりが1拍目ではない場合は、1拍目で蛇腹の向きを返すとフレーズがブツ切れてしまいます。この場合はどうするかというと、フレーズの始まりで蛇腹の向きを変えます。
『朧月夜』に開閉位置の線を書き込んでみます。この曲は、曲の始まりも各フレーズも3拍目から始まっていますので、開閉箇所は以下のようになります。
前奏以降は各段4小節目の3拍目で蛇腹の向きを変えるので、4小節分で蛇腹の向きを変えることになります。
小さい楽器で4小節分空気が持たない場合は、各段2小節目の3拍目でも蛇腹の向きを変えることになります。そうすると2小節分になりますね。
前奏に関しては先に書いたように前奏の終わりで蛇腹を閉じきっておきたいので、2小節分で蛇腹の向きを変えています。
息を吸うタイミングで蛇腹の向きを変えることが常態化している方はこのパターンの開閉で非常に戸惑われます。音を出すタイミングで蛇腹の向きを変えることを意識してください。
アコーディオン教則1巻では82頁83頁の動画で詳しく解説しています。
以下、よくあるお悩みに答えていきます。
空気が足りなくなる
閉じているときに空気が足りなくなるのには何種類かの原因があります。「いつも閉じで空気が足りなくなるんです」とおっしゃる方に案外多いのが
コードが変わったときに無自覚に蛇腹の向きも変えていることです。コードが変わるたびに蛇腹の向きも変えてしまうと無茶苦茶になります。この例だと2小節目の終わりに空気がなくなりますね。
いつも閉じで空気が足りなくなるという方の中でも「思ってもみないところで空気が無くなる」という方はこの問題だと思います。
肩や脇、腕の都合で、下の列に下がった時には蛇腹を開きたくなり、上の列に上がった時には蛇腹を閉じたくなるので注意してください。
あと、この楽譜の例のように7コードで蛇腹の向きを変えたくなる場合は左腕、左手のポジションが悪いことが多いです。
脇を締めたまま蛇腹を開いていると、肘から先がねじれて手の平が上向きになります。するとボタンから指が離れてしまいますので、7コードを弾くときには蛇腹を閉じにして手の平を楽器側面に押し当てたくなります。
左手指が横列に沿っていないと2の指が7コードから遠くなりますので、7コードを押さえるときだけ手首を自分の体の方に引き寄せることになります。その場合は開きたくなります。
いつも閉じで空気が足りなくなる方、まずは同じ小節数で蛇腹を開閉しているかを見直してください。
同じ小節数で蛇腹を開閉していても空気が足りなくなる
主な原因を書いていきます。
間違えて止まって弾きなおしている
実はこれも結構多い! 弾き直しをすれば、その分 空気を余分に使います。それを閉じのときに行えば当然、空気は足りなくなります。
拍数を間違えている
余分に音をのばしている、多く弾いているようなときは、空気が足りなくなることがあります。
開閉のタイミングがいつも早い
上の「具体的な開閉のタイミング」で書いた、「息を吸うタイミング」で開閉をしてしまうと、いつも空気がちょっと足りない状態になります。
脇を締めたままで蛇腹を開いている - 蛇腹を開くときに体がやや後ろ反りになる
脇を締めたままで蛇腹を開くと、蛇腹が内側に曲がっていきます。つまり内側がすぼんでいきますので頑張って開いた割には空気が入りません。そのために閉じた時にやや空気が足りない状態を引き起こします。開いたときの姿勢が辛いために閉じのタイミングが早くなっていることも多いです。この場合、上体がやや後ろ反りになるのも特徴ですので、問題を発見するポイントになります。姿勢についてはアコーディオンの弾き方/蛇腹の開閉姿勢を参照してください。
弾き始め(開き始め)が弱い
控え目な性格なのか そっと弾き始める方がいますが、そうすると閉じで空気が足りなくなります。
すごい筋力で閉じが強い
女性では見たことがないのですが、元気いっぱいの男性でまれに見られます。この場合は閉じ始めの音量が急に大きくなるので分かります。
曲の構成上、小節数が均等でない
曲の構成上、曲の一部分が4小節まとまりでないことが時々あります。歌謡曲ではサビ前に1小節余分に入ることがよくあります。この場合はフレーズを優先させます。
開きの小節では音の数が少なかった、またはpやmpの指示だった
開きのときの小節では休符が多かったり単音だったり、pやmpの指示だったけれど、閉じでは重音になったりmfやfになったりした場合は空気が足りなくなります。その場合は同じ音量の範囲内で開いて閉じるようにします。それまで4小節ずつで開閉していた場合はそこのまとまりだけ2小節ずつにして対応します。
アコーディオン練習の流れ(私の教室の場合)- 独習の方も参考にしてください
アコーディオン教則本・楽譜(ボタン式)
アコーディオン教則本・楽譜(鍵盤式)