アコーディオンの左手が見えない!
「せんせい、アコーディオンの左手って見えませんよね。」
「楽器をがんばって傾ければ見えないこともないですが、演奏中は無理ですね、つまり見えませんね。」
「どうやっても見えませんよね。」
「見えませんね。」
‐終‐
見えないものですが、ここで終わってしまうと独習を拗らせる方が出てくるように思うので、もうちょっと書きます。
鏡を見て左手ボタンを探してもいいですか?
初級の方からよく訊かれるのは鏡の使用(鏡を見て左手ボタンの位置を探してもいいか)についてですが、
やめてね。
‐終‐
さすがにここで終わってしまうのは乱暴なように思うので、もうちょっと書きます。
アコーディオンのボタンを探すのに鏡の使用をお勧めしない理由
先に鏡の使用(鏡を見てボタンの位置を探す)をお勧めしない理由を書きます。
一番の理由は
・鏡無しでは弾けなくなるから
です。何人か見てきました。この場合、鏡が無いと弾けないために
・自信を持って弾けない
という問題も起きてきますし、目で確認する癖がついていますので
・いつまでも左手ボタンの位置が覚えられない
という問題も出てきます。覚えられない←→自信が持てない の相互作用まで起きてきます。
具体的に言いますと、練習を始めて何年たっても、鏡無しの場所で弾くときには 演奏開始前に必死でドを探すことになるので、鏡で左手ボタンの位置を見ることはおすすめしません。
そもそも、頭の中で指示を出す→目で確認→弾く では遅いのですね。初級のうちはよくても段々対応しきれなくなります。頭の中で指示を出す→弾く にしましょう。
「鏡を見て左手のボタンを探すことは、自転車に補助輪を付けて走るようなものです」と説明すると大抵の方は納得してくださいます。補助輪付きで走れるようになったら補助輪を取っても走れるか、といったらそうではないでしょう。
無しでやろうと思ったら結局は一から体得するしかないのです。だったら始めから使わない方がよいと思っています。
すでに鏡を使用している場合、鏡の外し方も自転車の補助輪と同様です。「外してやってみる」んです。外さないと外れません。
※姿勢のチェックには鏡を使うのが有効です。(後でまた書きます)
左手ボタン配列図の鏡合わせ図の使用は?
これもお勧めしません。楽器に慣れてきて正図(正面からみた図)との関連が分かっているならいいと思いますが、初歩からの鏡合わせ図の使用はお勧めしません。
鏡合わせ図、つまり反転図ということですが、これもいくつか困ったことが出てくるからです。
・実際の配列とは反対向きになる
からです。当たり前といえば当たり前なんですが。
教則本1巻の6ページ、7ページの見開きは
左のページが右手側配列 ‐ 右のページが左手側配列
になっています。一見、これは逆のように思われるかもしれませんが、
このような関係になっています。
左手配列図にそのまま指を置いた位置と角度が実際の演奏時の位置と角度になります。
左手配列図を反転させるなら、右手側も反転させないと混乱するのではないかと個人的には思っているのですが、それ以上に
・手本演奏する講師の手元を見たときに混乱してしまう
ことが問題です。混乱まではしなくても「あぁ、見てもよくわかんないから あとでゆっくり考えよう」なんてやっているとレッスンが勿体ない。なので実際の向きで覚えられることを強くお勧めします。
‐‐‐
先に書いたように正図(正面図)と反転図の関係性がしっかり分かっていて、手本演奏を見ても混乱しない場合は反転図もアリですが、その場合は正図でもう大丈夫なのではないかとも思います。
アコーディオン練習で鏡を使用した方がよい場合
鏡を使った方が良い場合もあります。それは蛇腹の開閉姿勢の確認での鏡の使用です。
扇形に開閉できているかを確認するには鏡を見た方が断然いいですね。姿勢全体をチェックするのにも鏡は役立ちます。
後述しますが、初歩の初歩、左手が横列に沿っているかを確認するのには鏡を使用してもよいと思います。そのときは構える時だけ見てください。弾き始めたら鏡は見ないことです。先にもお伝えしたようにボタンの位置を探すために鏡を見るのはよくありません。
左手ボタンを探すのに鏡がダメなら どうするか
まずはベースのドが探せるようにする
基本ベース列のほぼ真ん中に位置し、印の付いているボタンがベースのドです。
左手ベルト(左の箱の側面に付いているベルト)に左手を通して構えたときに、4の指(薬指)でこのベース ドをすぐに触れるようにしましょう。
ボタンの位置を探すのに時間のかかる人のよくある姿として、「演奏以外で蛇腹を閉じたいときに、ベース ド周辺の適当なボタンを複数押して閉じる」があります。これは、楽器側面上部にある空気抜きボタン(エアボタン)を使って蛇腹を閉じると、またボタンを探すのが面倒だからです。
そこを面倒がらないこと。ベースのドを探すことに関しては数をこなせばこなすほど良いです。
だいたい複数のコードボタンを適当に押して閉じたらとんでもない不協和音が出るじゃないですか。私はボタンを探すのを面倒がる姿よりも不協和音を不用意に出されるのが嫌で、レッスンでそれをやる生徒にはその都度 注意します。
次にベース ド と コードC を一緒に押さえられるようにする
ベース ドに指が置けるようになったらコードCもすぐそこです。
ベース ドの横(外側横)がコードCです。ベース ドを4の指(薬指)、コードCを3の指(中指)で弾きます。
これができるようになったら、指の角度を保ったまま肘・手首ごと上下移動させます。
1列上に移動すればベース ソ +コードG(図ではGM)、ドの1列下に移動すればベース ファ+コードF(図ではFM) です。
なのですが、これが難しくてなかなかできない、という方もいらっしゃると思います。
左手側の「上」「下」や「横」「縦」をはっきりさせておく
まずは方向の呼び方の確認です。
「蛇腹側」に対しての「外側」は私がとりあえずそう呼んでいるだけなので、これは教室によっては違うかもしれませんね。7やdimのようにコード種別列で指示することもよくあります。
「上」「下」ですが、ストラデラベース(スタンダードベース)の場合、音の高低順に並んでいる訳ではないので、左手側で「上の列に移動して」と言ったら物理的に上、天井方向ということです。逆に「下の列に移動して」と言ったら物理的に下、床方向ということです。
初見殺し! アコーディオンの左手ボタン 上・下・横 問題
天井方向が上、床方向が下なんて、何を言っているんだ? 当たり前のことをもっともらしく書いて、と思われた方もいらっしゃるでしょう。
まずはこれをご覧ください。
フリー素材から引っ張ってきた写真です。
この、いらないアイテムは身に着けているのに肝心の服を着ていない素敵な殿方の左手に注目です。
アコーディオンの知識がなければ、誰もがこのように左手を差し込むでしょう。指の向きが右手と同じように体の中心に向かっていますね。素直に真っ直ぐ左手を差し込めばこうなります。
左手の構えの写真を見てみましょう。
指を横列に沿わせるとこうなります。
先ほどの写真の左手は
縦列に沿って並んでいます。この向きで構えた方が「上の列に移動」と言われた場合、かなりの割合で、
黄色の←の方向へ、指先の向いている方向を上だと思って移動させてしまいます。そして、
このようにベース ド の「横」のコードCを3の指(中指)で弾きたいのに・・・
「横」ではなく「上」のベース ソを押してしまいます。
素直に左手を突っ込むとこのように迷子になります。
横だと思って上を押してしまうこの状態から抜け出せない場合はいきなり挫折します。
左手ボタンの位置を覚えようとする前に、
・横列に沿って指を置くこと
・その上で、楽器の上下方向を把握すること
この2つの準備が必要です。
こんなこと初めてのときは分からないですよね。私も初めてのボーナスで手に入れたアコーディオンを担いだとき、あまりにも分からなくて途方に暮れました。電子オルガンの講師資格を持ってるから大丈夫だなんて思っていた当時の私は大甘でした。アコーディオンを買ったことを軽く後悔しましたね。
しかし、ここのページにたどり着いた方はもう大丈夫ですね。
まずは左手の指の向きです!
蛇腹の開閉姿勢の点検と、弾く前に左手指が横列に沿っているかを確認するときには鏡を使ってもよいです。ボタン位置を探す為に鏡を使うのは避けたいので、横列に沿って指が置けたら鏡は外しましょう。
左手の構えが分かったら、次は具体的な左手ボタンの位置を探すことになります。アコーディオンの左手ってどうなっているの?に左手ボタン配列図の見方が書いてありますので、よかったらお読みください。
アコーディオン教則1巻をお持ちの方は16頁の左手の練習が重要です。動画で詳しく解説しています。