うまく弾けないとき

「楽譜があまり読めない、なかなか弾けない」とは

前回は「楽譜が読めなくても弾ける」「楽譜が読めて弾ける」について書きました。今回は「楽譜があまり読めない、なかなか弾けない」とはどのような状態か、何が原因なのか、特に「楽譜があまり読めない」についてじっくり書いていきます。

ここはアコーディオンのサイトですが、この記事や関連記事はアコーディオン以外の楽器の習得に悩んでいる方にも参考になると思います。

「読める、弾ける」に対して種類豊富な「読めない、弾けない」

「楽譜が読めて弾ける」状態がどのようなものか、おさらいしておきましょう。

楽譜が読めて弾けるとは、

・楽譜の指示が分かる
・音を聴いて分かる
・楽器の操作が分かる

この3つが揃っていること。

音の高低については
楽譜に書いてある位置 - 音の名前 - 楽器の音の鳴る場所 - 聴いて確認した音
この4つが一致しています。

リズムに関しては、拍に合わせて音をのばしたり、刻んだり、休んだりでき、今何拍目かを常に把握しています。リズムを楽譜から読み取ることもできます。

この状態であれば、実力相当の曲ならば多少の練習であまり苦労なく弾けます。

これらの要素のうち1つでも抜けると楽譜がなかなか読めない状態になります。
1つ抜けているか、2つ抜けているか、3つ抜けているかは人それぞれで、その組み合わせも人それぞれです。加えて楽譜を読むことに関しては要素が多く、弾ける状態に対して弾けない状態は非常に種類豊富です。

弾けない理由は豊富、しかしそれに対して現れる行動は似てきます

以下のどれか か、複数に当てはまる場合は、「楽譜が読めて弾ける」要素の何かが抜けています。

・知っている曲しか弾けない 

・手本演奏が必要(つまり知っている曲しか弾けない)

・全ての音にドレミ…を書き込む

・音符を読むとき、鍵盤を探すとき、いつもドから数える

・全ての音に指番号を書き込む

・弾き始めの音を探すときに時間がかかる

・練習の始めは曲を思い出すために何回か弾く

・弾ける曲でも楽譜をドレミで読み上げられない

・曲の途中から弾くことは難しい、またはできない

・片手ずつ弾くとかえって分からなくなる

・新しい曲を覚えるのに時間がかかる

・弾いたものが合っているのか自信がない

・弾けていた曲も忘れてしまうともう弾けなくなり、一から覚え直しをする必要がある

なかなか読めない弾けない問題を引き起こす主な原因

ある程度練習しているにも関わらず、なかなか楽譜が読めない、弾けないような場合、認識の問題であることがほとんどです。
これらは頭の中のことであるので、周りの人間が原因を見つけ出すことが難しく、これがなかなか読めない弾けない問題の解決を困難にしています。
以下は主な原因です。
原因がひとつの方もいれば複数該当する方もいます。

・ドレミファソラシドの順序を把握していない、途中から唱えられない(英音名も含む)

・楽器の各位置を把握していない

・音名を頭の中で唱えていない(ドレミで歌っていない)

・音符、休符の種類、拍、拍子をしっかり理解していない、または抜けている

・頭の中で音が鳴らない

・何回聴いてもよく分からない(心理的な原因)

以下、これらについて詳しく書くと共に、改善方法も併せて書いていきます。

ドレミファソラシドの順序を把握していない、途中から唱えられない

「ドレミファソラシド」を知らないなんて、まさかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし「ソから順番に上がって唱えていってください」「ファから順番に下がって唱えていってください」とお願いすると途中で詰まってしまう人は案外といます。特にドを跨いで下がるとき、繰り下がりの引き算でひっかかるようにうまく出てこない方がいます。あと隣ではない音、2つ3つ離れている音がすぐに分からないという場合もよくあります。
そのような方によく見られる行動としては

・音符を読むとき、鍵盤を探すとき、いつもドから数える

という行動が挙げられます。楽譜を読むときに1音1音ドから上昇して数える、「ドレミファ……ソ、次の音は……ドレミ……ファ」という具合です。この場合ですと、ソ-ファという流れが掴めていませんね。そしていちいち数えるのは大変なので

・全ての音にドレミ…を書き込む

こともします。

鍵盤を探すときもいつもドから上昇して探す、「ドレミファソラ……シあった!」とやっている場合は、楽器の操作もなかなか覚えられません。

改善方法 色々な音から上昇・下降で唱える

***

アコーディオンの場合、左手コードは英音名を使うため、イタリア音名と英音名の対応は必須です。左手側ボタンの位置がなかなか覚えられない人は、英音名をまず覚えましょう。

改善方法 英音名も覚える

その他、音名(おんめい)でのつまずきを「読める」は「やがて弾ける」-音名編に書いています。

楽器の各位置を把握していない

鍵盤やボタンの配列をしっかり覚えておらず、指がすぐに置けない状態です。
鍵盤の場合でも、黒鍵の位置をしっかり把握していないために、シ♭ -ド と弾きたいところをシ♭-シ♮と弾いてしまうことがあります。このような方の特徴に

・弾き始めの音を探すときに時間がかかる

が挙げられます。

楽譜から音名が読み取れていて、楽器の位置を把握していないだけならば位置を覚えていけばいいだけなのであまり問題はありません。

しかしこれに加えて「音名を頭の中で唱えていない」場合は、深刻な読めない弾けない問題を引き起こすので注意が必要です。

音名を頭の中で唱えていない(ドレミで歌っていない)

音名を頭の中で唱えていない(ドレミで歌っていない)* 場合、楽譜の音符の位置も楽器の各音の位置も覚えていくことが困難になります。位置を表す呼び名(音名)が無いためです。聞いた音の高低は分かっていても、それの呼び名(音名)がないため楽譜や楽器の位置と対応できません。

*音名はイタリア音名でも英音名でもいいです。

このことは誰かからの指摘が無いとまず気付けませんし、頭の中のことなので、周りの人間もなかなか気付けません。指摘をされて

「え!? 音の名前を?! 言うんですか!?」

と大変に驚かれることもよくあります。

音名を唱えないと、楽譜が読めて弾ける人がしている

楽譜に書いてある位置 - 音の名前 - 楽器の音の鳴る場所 - 聞いて確認した音 の一致ができません。

このような方によく見られる行動としては

・知っている曲しか弾けない

・手本演奏が必要(つまり知っている曲しか弾けない)

・全ての音に指番号を書き込む

・弾き始めの音を探すときに時間がかかる

・練習のはじめは曲を思い出すために何回か弾く

・弾ける曲でも楽譜をドレミで読み上げられない

・曲の途中から弾くことは難しい、またはできない

・新しい曲を覚えるのに時間がかかる

・弾けていた曲も忘れてしまうともう弾けなくなり、一から覚え直しをする必要がある

が挙げられます。これらの症状が複数出るのも特徴で、これは音名の代わりに指の運動で覚える為です。

音名を唱えているという方でも「始めは楽譜を読むけど、覚えてきたらあとは感覚で弾けるので音名は唱えない」という方は、「音名を唱えていない」に該当します。

音名は常に唱えるものです。
実際の音の高さと楽器の押さえる位置が完全一致するなら位置を思い描くだけで演奏できますが、それができない場合は音名を唱えた方が良いでしょう。

音名を唱えず、位置把握もおぼろげな方は大抵「なんとなく弾いている」「感覚で弾いている」「勘で弾いている」とおっしゃいます。

その なんとなく弾き、感覚弾き を続けると、「なかなか上手くならないけど、こんなもんかな」と思えてきてしまいます。趣味の世界なのでもちろんそれならそれでも良いのですが、「もっと上手く弾きたい」という場合は自分がなんとなく弾いていないかを見直したほうが良いでしょう。

これに該当しないと思っている方の中にも

左手の楽譜 - へ音記号が読めない

英名とイタリア音名を関連付けて覚えられない(正直今更そんな面倒くさいことをしたくない)

という人がたぶんいらっしゃると思います。この場合は弾いた音の響きを聴いて右手と合っているか確認し、指の運動で覚えようとします。そのため

・左手の位置を探すのに時間がかかる

のに加えて

・右手と一緒じゃないと弾けない

ことがほとんどです。講師に「左手だけ弾いてください」に言われたときに、初めて楽譜を読む時のように音符を数え始めることも珍しくありません。初級のうちはそれでも弾けるでしょうが、左手に8分音符が出てきたり、対位ベースが出てくると途端に進めなくなります。

「いつまでも左手が覚えられない」「右はいいけど左は弾けない」という方は、このように左手の楽譜を読んでいないことが多いので注意です。

改善方法 常に音の名前を唱えながら弾く

練習の仕方については、さらに詳しくアコーディオン練習の流れ(私の教室の場合)に書いてあります。

音符・休符の種類、拍、拍子をしっかり理解していない、または抜けている

楽譜から音の名前が分かる、楽器の操作も覚えている、けれど

・楽譜を見てもどんな曲か見当がつかない
・両手で合わせるのが難しい
・弾いた曲が合っているのか今ひとつ確信が持てない

このような場合は、音符や休符の種類、拍、拍子をしっかり理解していない、または抜けている可能性が高いです。

音の高低は楽器の押さえる位置との関わりもあって覚える方が多いのですが、なぜか音符・休符の種類と拍と拍子は適当になる方が多いのです。初級のうちに手本で聞いたとおりになんとなく弾けていた方も、拍や拍子の理解が無いと、休符やシンコペーションが出てきたときにリズムが大崩れしてしまいます。

改善方法
拍と拍子を理解する、拍を打ちながら弾く

拍、拍子の問題は、そこそこ弾ける場合は原因に気付きにくいのですが、曲の完成度にも関わってくる問題なので、早めに気付いておきたいですね。
拍を打ちながらというのは心の中で打ちながら弾くのですが、メトロノームをかけるのが確実です。
拍と拍子に対するよくある間違いを「楽譜が読める」は「やがて弾ける」-拍、リズム編に詳しく書きましたので、心当たりのある方はこちらもお読みください。

頭の中で音が鳴らない

聴覚イメージ(頭の中で音を鳴らす、歌える)ができているか、という話ですが、すでにやっている方にとっては「何を言っているのだろうか、それが無いと弾けないじゃないか」と思われると思います。
聴覚イメージが弱い(頭の中で音が鳴らない、歌えない)方は色々なことで苦労している可能性があると私はみています。
聴覚イメージは指の動かし方を指示することや曲を覚えることと繋がっています。これがない場合は音声的な手掛かりがないので

・音符を見る→鍵盤やボタンを押す、をひたすら繰り返す

ことになります。
シューティングゲームのように見る押す、見る押す、という弾き方をしている場合はこの聴覚イメージがあるかどうか、ご自分を観察してください。

聴覚イメージが弱い場合、これを育てるには「思い描く(イメージする)」というぼんやりとした方法になりますが、聴いて、イメージすることが大事です。

ひどい音痴である場合、音の高低がどういうことかよく分からないという場合もこの聴覚イメージが弱い可能性があります。下の「何回聴いてもよく分からない」状態を引き起こすこともあります。

何回聴いてもよく分からない

自分が弾いた音を耳で聴いても、合っているのか間違っているのかが分かりません。

どれくらい分からないかいうと、何回聴いても分かりません。

そのため、楽譜を読み間違えていても自分では気付けません。
「違っているから確認してね」と手本を聞かされても自分が弾いたことと、どこがどう違うのかが分かりません。

このタイプの方は大きく2つに分かれます。

・音楽で嫌な思いをしたことがある
・多少間違えても大した問題ではないし聴き手は気付かないと思っている

この2タイプです。共通するのは意識が自分の出した音に向いていないことです。

 

音楽で嫌な思いをしたことがあるので自分の出した音に意識が向かない

このような方の場合は今までに挙げた問題を併発していることがほとんどです。音の高さもリズムも、耳で聴いて確認できないために楽譜の読み方が合っているのかどうか確信が持てませんし、楽器の音の位置も合っているのかどうか確信が持てません。

それでも楽器に挑戦されている場合は強い意志で始められていますので、努力・工夫を惜しまないのも特徴です。

全ての音にドレミを書き込む
全ての音に指番号を書き込む

確認手段が乏しいために独自の努力をされる方も多く、

自分なりの印を楽譜に書き込む
鍵盤やボタンに目印をいくつも貼る
音の数え方に独自ルールがある
まれに
独自の記譜方法で別に書き起こす

があります。

耳で聞くのも音名で確認するのもあやしいので、指の運動で覚えるしかなく

途中で止まると弾けなくなる

のも特徴です。

聴覚イメージが育っていない可能性もありますが、心理的な問題が大きいと私はみています。

頻繁に「聴いても分からない」と訴える方に聞き取りをすると、

音楽の授業やカラオケなどで嫌な思い出がある
身内からリズム音痴、才能が無い、音感が悪い、等々 言われた

過去に何かしら嫌な思いをされています。それに対して

才能がないから仕方ない
リズム音痴だから仕方ない
音楽とか全然関係の無い家で育ったから仕方ない

という自己防衛をとることが非常に多いですね。始めは弾けないから嫌な目に遭ったのかもしれませんが、嫌な目に遭ったから余計に弾けなくなっていったのです。
酷い場合には「いくら頑張ったって駄目でしょう、こんな生徒」、「才能が無いってはっきり言ってくれませんか」と強い自己否定に陥っている場合もあります。

そのような方々にレッスンをしていて感じるのは、「聴いても分からない」というより、「もう聴きたく無い」という拒否の気持ちです。聴いても分からないなら聴かなきゃいい、という感じでしょうか・・・

この場合は、他の学習課題よりも心理的な問題を解決する方が先です。

このことについては長くなりますので思うように弾けないのはその思い込みのせいかも~~!!に書きました。お心当たりのある方はお読みください。

 

多少間違えても大した問題ではないし聴き手は気付かないと思っているので、自分の出した音に意識が向かない

音を間違えたまま弾いても気付かない、直さない、そのまま弾ききってしまうという方。ステージ本番なら止まらず弾ききってしまった方がいいのですが、練習段階からずっとそうで、周りの人間から

「そこ間違ってない?」

と指摘されると

「あ?違った?まあいいでしょ」

「あ、そう? 違ったっけなあ、わかんないなあ、まあいいんじゃない」

「M(メジャー)コードをm(マイナー)コードで弾いてもちょっとしか違わないし大した問題じゃないでしょ」

「コード違ったかなあ? 1列2列違ったって聴いている人には分からないでしょ」

等々返している方は自分の演奏に意識が向いていないタイプです。もう少し詳しく言うと、自分の演奏の課題点に意識が向いていません。一度録音してご自分の演奏を聴いてみてください。
と、言われてここで

「自分の演奏なんて聴きたくないよ」

と思われた方は誰にも聴かせない方がいいですよ、自分で聴きたくないほどなんですから。

ちょっとまずいかな、と思われた方は試しに一度演奏を録音して聴いてみてください。器楽演奏に限らずですが、課題点に意識を向けるか、向けないかでその後が大きく変わってきます。

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「楽譜が読める」は「やがて弾ける」‐リズム編
「楽譜が読める」は「やがて弾ける」- 音名編
アコーディオンの弾き方 概要、記事まとめ

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